【原作ネタバレ有】「逃げるは恥だが役に立つ」ドラマ第8話感想

 

注意※ドラマ8話、及び原作42話までのネタバレを含んでいます。
ネタバレを目にしたくない方は、速やかに離脱してください。

 

 

 


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ドラマ第8話を視聴。

第7話のラストの盛り上がりから、てっきり平匡の卒業話まで進むと思い込んでいたので、スローペースな展開に拍子抜け、というのが第一印象だった。

しかし一番驚いたのは、平匡から「女性経験がない」という告白があったことだ。

これは原作にはないやりとりである。それを入れるのか、という衝撃を筆者は受けた。

 以下は、何故、原作にない告白が挿入されたのか、筆者の想像を、原作とドラマを比較して記したものである。


●核となる出来事

ドラマは原作のいろんなエピソードや台詞を、順番を入れ替えて構成し、ドラマにふさわしい盛り上げ方を演出している。

第7話~8話はそのシャッフル具合が加速し、原作読了組にも先が読めないハラハラする展開だった。

ドラマ第7話~8話で核となる出来事は下記である。

  • みくりが肉体関係に進んでもいいことを意思表示する
  • 平匡は未経験のため失敗を恐れ、これを拒否する
  • 2人の関係がぎくしゃくする
  • 2人の関係が修復し、恋愛関係が進展する

原作では4巻~6巻に相当する出来事だが、エピソードの順番を入れ替えているため、ストーリーや台詞の意味合いなどの変更点は多い。しかし核となる点は同一である。


●平匡の心の壁

本作における主要なテーマの一つが「平匡が心の壁を壊して外に出る」であるが、このために取った行動が原作とドラマでは異なる。

  • 原作:みくりに「大好き」と言われ、ようやく「好きですよ」と言えた平匡。その後セックスに進展するが、最中に逃げ出してしまう。それでも、みくりが待っていてくれたため、やっと心から安心し、壁を壊し、脱童貞を果たす。
  • ドラマ:作り置き弁当のメッセージから愛情を実感し、自信を持つ。「女性経験がない」「失敗するのが怖い」「拒絶したことで傷つけたことに気付かなかった」ことを告白。みくりの「女性経験がないことを知っていた」「私にとっては大したことじゃなかった」「これから帰る」という発言に安心し、壁を壊し、走り出す。

エピソードは異なるが、核となる点は以下の通り。

  • みくりを傷つける言動をとる→それでもみくりは自分を待っていてくれることを知る→安心・自信を得る→壁を壊す


●ターニングポイントとなるエピソードがドラマでは使えない(?)

高齢童貞が主要テーマであることは、原作の序盤から明かされていたので、読者は脱童貞が重要シーンであると予め期待し、作者も(平匡の心情を)赤裸々に描写して山場を乗り越えた。

性行為自体の描写はないものの、「半分しか勃たなかったから」いたたまれなくなって逃げ出してしまうなど、エピソードは生々しい。

掲載誌のKISSは成人女性が読者層なので、こういう表現も可能である(規制はあるのかも知れないが)。

が、夜10時の連続ドラマは老若男女が視聴者であり、主演は人気女優だ。最初から、あからさまな性描写はNGだった可能性がある。

読者もそれは何となく分かっていたし、「脱童貞」イベントは、原作とは違う流れになるか、ぼかして描かれると想像していたと思う。

しかし、ここで重要なのは、平匡にとっては「脱童貞」というイベントが「ただある」だけではダメだということだ。

必要なのは、「みくりを傷つける→それでもみくりが自分を受け入れてくれる→安心・自信を得る→壁を壊す→自尊感情を高める→自信をもって人生を楽しく生きていく」という、平匡が変わって行く過程である。

「みくりを傷つける」行為として、原作では「行為中に逃げ出す」を選んだが、ドラマ側としては、よりによって一番映像にしづらいものが、一番重要なエピソードになっているのである。

想像だが、主人公のターニングポイントとなるアクションがドラマでは使えないことは、企画段階から難問だったのではないだろうか。


●ドラマにおける「心の壁」の破壊

では、ドラマでは心の壁をどのように壊したか。

まず、山場を変更し、「みくりの意思表示→拒否」のシーンを盛り上げる場所とした。

みくりが傷つくのは「行為中に去られた」からではなく、「拒絶されたから」という穏便な理由に変更。

そして、怒涛のラブシーン→真夜中ダッシュのインパクトに対抗できる行動として、「未経験であることを告白」を選択した。

原作では、両家顔合わせの際に平匡の父が「彼女がいたためしがない」という発言をしたので、みくりにもうすうす知られているだろうという認識はあった。

ドラマでは、顔わせの際にこの発言がなく、後日、平匡の母がみくりに電話で話している。顔合わせの回に組み込まなかったのは、単に後回しにした方がテーマが分散せず、ストーリーを組み立てやすいからかと解釈していたが、まさか、ここで告白させるための計算だったのだろうか?

なので、この告白自体は原作では不要なものだが、実は「拒絶に対する説明・謝罪」も、原作の平匡は行っていない。

みくりが謝罪をした際も、その件には触れられたくないと強硬な態度をとり、みくりを更に混乱させている。

もしかしたら「システムの再構築」の際に話すつもりだったのかも知れないが、その機会は失われている。

原作ではプライドが捨てきれず、一晩迷走した挙句、明け方になってやっと心から安心したのか(もしくはプライドが粉々に砕けたのか)、壁を壊すことに成功したが、ドラマではむしろ能動的である。

プライドを潔く捨てて、自らの意志で電話をかけ、みくりの話を遮ってまで、「女性経験がない」「失敗するのが怖い」「拒絶したことで傷つけたことに気付かなかった」ことを告白している。

原作の平匡ですらできなかった、自身のみっともなさを言葉にし、自ら壁を壊すというシナリオになっている。

原作を超えた、と思った。

主人公のターニングポイントとなるアクションが使えないという難問に対して、原作の流れを踏襲しつつ、ある程度ぼかして描写する、という選択はしなかった。

一連の出来事を、それこそ因数分解をして、核となる部分を抜き出し、原作の平匡ですら成しえなかった行動をさせることで解決している。

ターニングポイントである「脱童貞=心の壁を壊す」を脱童貞エピソードなしで成立させたのだ。

ラブシーンにもせず、電話の会話だけで成立させたことも驚異的である。


●第9話以降の展開予想

もう心の壁はなくなっているので、無理に性行為のシーンを組み込む必要はなくなった。

なので、二人のベッドシーンは、第9話でさらっと匂わせる程度のものになるか、もしかしたら、このままプラトニックなまま、最終回を迎えるかもしれない。最終回で夫婦として一緒に眠るシーンが出るとか。

原作読了組としては、さっさとイチャイチャ期に入って、もやもやして、青空市をやって、就職してCEOになってくれよ!という思いがあるため、ジレジレ期が始まりそうな予告に戦々恐々である。

恋愛面のピークを最終回に持ってくる可能性も捨てきれない。(恋人関係に不安定要素があるまま、仕事と結婚と家事についてもやもやできるものだろうか)

そういう意味では、8話でやっさんが既に運転免許を所有し、軽トラで館山にやってきて、野菜ジャムの試作をしているのは、伏線が見えて安心できる。

ともあれ、次回からはデレ及び平匡のターンが始まることを期待している。(既に、次回予告の「疲れた」がヤバい)

「システムの再構築」は、コトの前に二人で真面目に話し合っていた、今後の仕事との兼ね合い(わざわざそんなことを確認してしまうのが二人の愛らしさだと思う)か、プロポーズだといいのだが。


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以上は、筆者の完全な妄想である。

第9話に進んでも、まだ平匡の心の壁が壊れていなかったり、脱童貞が重要イベントとして扱われていた場合、ここに書いたことは、ただの恥ずかしい早とちりになるので、その際は「気持ち悪い奴がいたな」と思って、早急に忘れて欲しい。